Quantum_and_Thermo

量子力学と熱力学と時代背景

量子力学のスタート地点として有名なプランク分布の式。1900年にプランクが黒体輻射の式を作ったのは有名なので,物理系の人はみな知っているだろう。その一歩前の段階,長波長でうまく働くレイリー-ジーンズの式と,短波長でうまく働くウィーンの式が有ったことも知っているだろう。

一歩引いてみると,この時代,なぜ黒体輻射が注目されたか気にならないだろうか。

1865年ごろから1900年頃,ヨーロッパは第二次産業革命の時代。鉄の需要が高まった。鉄鋼炉の温度管理は重要だが,普通の温度計を突っ込んでも溶けてしまう。そこで,黒体輻射を見て温度を測っていた。が,その黒体輻射の物理的な説明をしようとしたらうまくいかない。

円山,プランクの法則の裏側,伝熱 (2005)

これが量子力学のスタートと言えよう。社会的な要求に応える方向に努力したらサイエンスとして面白かった,という例とも言えるだろう。

同様の時代背景は熱力学にも見られる。1760年頃からイギリスで産業革命が始まったと言われるが,ワットの蒸気機関の発明は1769年。黒体輻射に関するシュテファン-ボルツマンの法則が1879年。

私個人は,直接何かの役に立つ事を研究しようと思っては居ない。しかし,自分が何かを研究するきっかけとして,社会的に何が問題であるのかを参照するのは良いことだと思っている。


(もう少し加筆したいと思っているが,とりあえずこれで公開。)