4D-cube

四次元空間についてイメージしてみよう。

流石に球では単純すぎるので,四次元立方体を考える。

三次元立方体からの類推で,各頂点に4本の,お互い直交した同じ長さの辺が交わる立体が四次元立方体だと定義する。

2,3,4次元立方体の構成要素を比較しよう。

2次元立方体=正方形は,頂点4個,辺4個,正方形一つで構成される。これらは何次元の特徴を数えたか,というだけの数である。

3次元立方体は頂点,辺,面が8, 12, 6個,立方体一つで構成される。

頂点の数について考えよう。正方形の4つの頂点それぞれの「z軸方向」に,辺の長さだけ移動した点にもう一つ頂点があるので,3次元立方体の頂点の数は2次元立方体の頂点の数の2倍になる。同様にn次元立方体の頂点の数は,n-1次元立方体の頂点の数の2倍となる。よって頂点の数は2^n個である。

n次元立方体の辺の数は,各頂点にn本の辺が集まっている点であることを考え,(1/2)・n・2^n本である。最初の1/2は,同じ辺を両端の頂点から2度数えている分の補正である。

4次元立方体は,と考えると,3次元立方体8つで構成される事になる。

展開図

展開図を考えよう。二次元立方体の展開図は,四本の線分が繋がった,ただの一本の線分である。これで2次元が1次元に展開された。

三次元立方体の展開図は数種類あるが,6つの正方形が辺を共有している形である。これで3次元が2次元に展開された。

2D net

図1:三次元立方体の二次元展開図の例。白矢印で示した方向に正方形を90度「転がす」事で,青矢印で示した別の形の展開図に変換される。

四次元立方体の展開図は,8つの立方体が面を共有している形であるはずだ。これで4次元が3次元に展開されるはず。

3D net

図2:四次元立方体の三次元展開図の例。白矢印で示した方向に立方体を90度転がす事で,青矢印で示した別の展開図に変換される。

展開図の組み立て方

この展開図の組み立て方は,やはり3次元立方体を展開図から組み立てるところからの類推で考えよう。

net building

図3:立方体の展開図の組み立て方。

3次元立方体は,2次元(xy面)に書かれた展開図を3次元目(z方向)に折り曲げる事で,直交して対面していたを重ね合わせて組み立てる。図3上側のように,(010)と(100)が(001)で出会うように折り曲げる。

z方向に折り曲げる,という動作は,後の拡張性を考えて,xz面あるいはyz面内の回転操作と表現しよう。

4次元立方体の展開図は,直交して対面していたを重ね合わせて組み立てる。(xyz)に加え,四番目の次元uを加えた(xyzu)の座標系を用いる。

(0010), (0100), (1000)が全て(0001)で出会うように折り曲げたい。面を重ねる,という事を意識すると,組み立て操作によって(0-110)と(1-100)が(0-101)で出会う事も要求される。

上側の立方体はz軸をu軸に回し,手前の立方体はx軸をu軸に回すように回転させ,右側の立方体はy軸をu軸に回すように回転させると,これらの要求がすべて満たされる。

動画で見てみよう。まずは3次元立方体の組み立てから。

動画1: 3次元立方体の展開図の組み立て方。

動画1の下の図は三次元の世界に住む我々にとって馴染みのある組み立て方である。z座標が大きくなるにつれて白っぽくなるように作図した。

上の図は,xy面に投影した図である。まっすぐz軸方向から見た図と思ってもよいし,二次元の世界の人が見たらどう見える,という解釈でも良い。z軸方向に面が立ち上がっていく事を二次元人は感知できないが,白っぽくなっていることで「理屈の上では自分の知らない方向に動いているのだろう」と想像してくれるはずだ。見た目としては右側と下側の正方形が,左上の正方形に吸収されていくように見える。

同様に,4次元立方体は,3次元(xyz)に書かれた展開図を4次元目(u方向)に向けて回転させて,直交して対面していたを重ね合わせて組み立てる。

u方向に向けた回転,というのは,xu面,yu面,あるいはzu面内の回転操作である。

動画2:4次元立方体の展開図の組み立て方。

z座標が大きくなるにつれて白っぽく,u座標が大きくなるにつれて赤っぽくなるように作図した。下の図はxyzの3次元を作図,上の図はxyuの3次元を作図した。

xyzの図から注目しよう。最初の瞬間はu座標がどの点も0で,赤さの度合いは0である。uの方向にものが動くに連れて,真ん中の立方体に向けて周辺の立方体が吸収されていくように見える。動画1の上側の図との類似性に気づくだろうか。動画1では白っぽくなる(zが大きくなる)につれて正方形が吸収されていた。動画2では,赤っぽくなる(uが大きくなる)につれて立方体が吸収されている。

xyuの図も見てみよう。最初の瞬間,uは0の面にすべての点が収まっている。ただし,点によってzの値が異なるため,青から水色のまだらに見える。ここで見える立方体(正方形に見えるが,zまで入れれば立方体)がu方向に回転して入ってくるにつれて,xやyが減っていく。これがxu面やyu面での回転操作にあたる。最終的にはx方向にずれていた分がu方向に回転してきて,組み立てが終わる。

四次元ポケットの収納法

四次元ポケットには,xyzの3次元の物体が沢山入っている。これは,出し入れの瞬間にz軸をu軸方向に90度ねじっていると思えば納得できる設定だ。ポケットの中を見ると,xyに投影されたペラペラの物がいっぱい入っていることだろう。

謝辞

この四次元立方体の展開図に関する考察は,阪大基礎工 学部2年の実習授業での議論が基になっています。私は当初,四次元立体の三次元投影と三次元断面だけを考えていたのですが,学生から展開図を考えるというアイデアを貰いました。