air distribution
空気はどこまで広がっているか
必要な知識レベル:大学3年程度(統計力学)
結論
地上から上空まで温度は一定で,250Kと仮定し,またボルツマン分布を仮定する。
これにより空気は標高7600mで1/eまで減少すると得られる。この見積もりは実験とよく一致する。
途中経過
話を簡単にするために地上から上空まで温度は一定で,250Kとする。
(単なる見積もりなので50Kとか100Kくらい間違っていても,気にする価値は無い。)
空気の分布にはボルツマン分布 exp(-E/kT) を仮定する。
標高 h[m]に居る分子の位置エネルギーEはmghである。mは分子質量,gは重力加速度である。
分子の質量は,窒素で代表しよう。28g/molであるので,分子一つあたり4.65x10-26 kgである。
mg=4.56 x 10-25 [kgm/s2]となる。これにhをかけると位置エネルギーになる。
kTは,1.38x10-23 [J/K] * 250[K]=3.45x10-21[J]
地表,つまりmgh=0の時のexp(-E/kT)はexp(0)=1で,これが1気圧に相当する。
mgh=kTとなるときのexp(-E/kT)はexp(-1)=1/e=0.368程度。そのときのhはどのくらいだろうか。
mgh=4.56 x 10-25 [kgm/s2] * h = kT = =3.45x10-21[J]
Jはkg m2/s2であることを思い出しておこう。
h= (3.45x10-21) / (4.56 x 10-25) [m] =7570[m]
いろいろ適当だけれども,標高7570mで気圧は0.368気圧,という見積もりになった。
ここまでは,頭の中に入っている値と電卓で到達できる。
さて,実験データを調べてみよう。
理科年表によると,0.368気圧になる標高は7710mだそうだ。
また,標高0m(288K)から8000m(236K)の間で気温はほぼ線形に低下していき,平均気温は262Kであった。
適当な見積もりをしているので,合ってると言って良い見積もりであると言えよう。
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分子一つのエネルギーは,運動エネルギーも含めて
E = (1/2)mv2 + mgh
となるべきではないか,と思う人もいるだろうし,実際,それが正しい。
空気が広く空間に分布しているのは位置エネルギー云々ではなく,温度がある=分子が動いている=床に留まっていられないからで,運動を考えないのはおかしい,と思う人もいるだろう。こちらは正しくない。これについて追記する。
ボルツマン分布に従うと,上のエネルギーを持った速さv, 高さhの分子の分布関数は
f(v,h) = exp[-{(1/2)mv2 + mgh}/kT] = exp[-(1/2)mv2/kT] exp[-mgh/kT]
に比例する。標高に対する空気の分布を考えているときには,「ある高さに居る全ての速度の分子の数」を気にしているので,vについて積分した分布が問題になる。
f(h) = ∫∫∫ f(v,h) dvx dvy dvz
= exp[-mgh/kT] ∫∫∫ exp[-(1/2)mv2/kT] dvx dvy dvz
となる。積分したところは温度を決めれば単に定数になるため,位置エネルギーだけ考えた議論と一致する。